日本一おいしいミートソースの裏側には、
日本一?の工夫があった。

 

■カンブリア宮殿でも紹介された、「日本一おいしいミートソース」

「自家製生麺と濃厚ミートソースが美味しすぎる」とネットやTVで話題になり、着実にファンを増やしているイタリアンレストランがある。イタリアンイノベーションクッチーナが運営する「東京MEAT酒場」の「日本一おいしいミートソース」だ。

実際に食べてみれば分かるが、食べ方も独特だ。ミートソースは器の下に眠り、その上に自家製リングイネの生麺がどんと載り、ソースは見えない。すぐ混ぜ禁止で最初は生麺の特徴あるもちっとした食感を味わい、次にこだわりの詰まったミートソースを絡ませ、最後は割りトマトスープを入れスープパスタとしても楽しむ。麺の替え玉も可能だ。いわゆるミートソースの固定概念を打ち破り、汁なし麺やつけ麺の楽しさも取り入れたメニューは、お客様の8割以上が注文する人気メニューになっている。


■多店舗展開。物流面と看板メニューのクオリティー向上が課題に。

現在、イタリアンイノベーションクッチーナでは、この「日本一おいしいミートソース」を17店舗で提供しているが、6年前は5店舗で多店舗展開を目指す飲食店が必ず突き当たる壁に直面していた。

「日本一おいしいミートソース」は主に自家製麺とミートソースから構成されるが、自家製麺はある店舗の設備を利用してフル稼働すれば他店への流通も出来る。しかし添加物や化学調味料を使用しない、30種類の食材を10時間かけてつくるミートソースは、特に大きな課題を抱えていたのだ。

一つは、食材の仕入れの問題。他店との差別化を図るためにこだわりの食材を使用しているが、従来の仕入れ業者の配送は都心部のみで、新しく出店する地域は対応が出来なかった。

もう一つは、クオリティーの問題。各店舗で個別に調理を行うか、セントラルキッチン方式を採用するか。各店舗で調理を行う場合には高い調理技術を持つ人材の育成が必要になるが、時間とコストがかかり、育てても人が辞めてしまうと店は維持できなくなる。セントラルキッチン方式は、数店舗程度の規模だと自社で設備を持つのはコスト的に厳しく、業者に委託しようとしても受けてもらえない微妙な規模だ。また一定のクオリティーは担保できるが、味の向上は見込めないというデメリットも持ち合わせている。

 

■小回りを利かせて、大手には不可能な独自の施策が打てる。

この課題に対し、イタリアンイノベーションクッチーナが導き出した答が「独自の物流網の構築」と、セントラルキッチンではなく「プライベートブランドの開発」だ。具体的にはアクティブ・ギア社と提携を行い、多店舗展開に伴うデメリットを最小限に抑え、メリットを最大限に引き出す施策を実践している。

まず「独自の物流網の構築」では、複数の食品卸から各店舗に直接配送を行うルートを、食品卸から一括してアクティブ・ギア社が仕入れ、その他の食材も集約した形で各店舗に配送を行う体制を構築した。従来の仕入業者では不可能だった都心部以外の配送も可能にした。この物流網のおかげで、各店舗の仕入れにかかる手間を大幅にカットすると同時に、複数からの配送ルートを一本化することで、結果として配送コストの削減も実現した。さらに、新しく店舗展開を行う時の立地の制約が少なくなるというメリットも生まれたのだ。

また「プライベートブランドの開発」では、店舗厨房で30種類の食材を使用し10時間かけて仕込むミートソースのレシピを細分化し、時間と手間がかかるが大量調理に適した下調理ベース部分と、繊細な調理センスが求められる部分を切り分けることで、数店舗規模では不可能とされていた大手専門メーカーアリアケジャパンでのプライベートブランド製造を実現した。肉の旨みを引き出す焼きの調理過程や香辛料を使った仕上げの微調整など、風味の部分は最終的にお客様に向き合う各店舗で行う工夫をおこなっている。

さらに、独自の物流網を積極活用することで、プロの調理人の技術を活かして店舗と全く同じ材料、工程、時間をかけて仕込みを行う企業と提携を実現した。このおかげで、味の土台となるクオリティーをしっかり担保して大規模チェーンでは難しいこだわりを守り、トータルでクオリティーを向上させ、さらには各店舗の個性も活かせる体制を構築している。

 

■売上は2.5倍に。堅調な経営を実現。

この取組により実現できた大きなメリットがもう一つある。仕入業務の手間と看板メニューの仕込み時間の削減で、店舗スタッフに時間の余裕ができ、より接客や調理技術の向上に集中できる環境が生まれ、さらなるお客様満足につながるサービス環境が出来たという。実際に、「日本一おいしいミートソース」の売り上げは6年前の2.5倍以上に増えている。ただ単に「美味しいもの」を提供するだけでは厳しい時代だからこそ、このようなトータルでの取り組みがより大切になってくるのだろう。